HRT(ホルモン補充療法)とは、文字通り、閉経前後に体内で不足してきたエストロゲンを、飲み薬や貼り薬として補充する療法です。エストロゲンを補充することによって、自律神経のバランスが整ってくるため、特に、ほてり・発汗・冷え・動悸などの血管系の不調や、うつなどの神経症状は改善されやすいといわれています。
また、前述の症状に加え、皮膚や粘膜の乾燥や萎縮、コレステロール値の上昇などにも、高い効果がみられ、若々しさを取り戻す人もみられます。骨粗しょう症の予防効果も高く、閉経後すぐに治療を始めた人ほど効果的で、いったん減った骨量を増やす効果も確認されています。
エストロゲンは生殖器関係に影響を与えるため、治療を開始すると、乳房が張ってきたり、性器から出血するなどの副作用が表われることがあります。副作用があまりにひどくて、つらい場合は、薬の量や種類・使い方などを変更することが必要ですので、医師に相談するようにしましょう。
HRTもピルも、女性ホルモンの投与という意味では同じですが、その目的は全く異なります。HRTは、エストロゲン量が減少している人を対象に、エストロゲンを正常値に近づけるために行うのに対し、ピルは、エストロゲン量が正常な人に、さらにエストロゲンを投与し、人工的に排卵を抑えることを目的としています。
この2つは、女性ホルモンの含有量も成分も異なりますので、間違えて使用しないようにしなくてはなりません。
HRTは大変効果的な治療法ですが、中には受けてはいけないケースがあります。子宮内膜と乳腺は、もともとエストロゲンに依存した組織のため、そこから発生するがんは、エストロゲンと深い関係があります。乳がんや子宮がんの経験者や、身内にそれらの病気にかかった人がいる場合は、専門医にきちんとチェックしてもらう必要があります。
HRTの投与(服用)法には下記の4種類の方法があります。
周期的投与法は、エストロゲン投与には休薬期間をおかず、プロゲステロンのみ、遂次周期的に投与する方法です。擬似月経状態(排卵が無いので妊娠はしない)を作るため、プロゲステロン服用後には出血がみられます。そのため、主に閉経後間もない人を対象に行われます。

逐次的併用法は、エストロゲン、プロゲステロン共に7日間の休薬期間をおく投与方法です。エストロゲンを21日間服用。後半の10日間は黄体ホルモンも同時に服用します。その後7日間の休薬期間に出血がみられます。

持続併用投与法は、エストロゲンとプロゲステロンを併用し、両方を連続投与する方法です。プロゲステロンを併用するのは、子宮体がんの予防のためで、不規則な出血がみられますが、治療を続けていくうちに自然と止血します。効果は、周期的投与法とほとんど変わりません。

作用の穏やかなエストロゲン(エストリオール)を単独で投与する方法です。エストロゲンだけを、長期にわたって投与し続けると、わずかながらも子宮体がんのリスクが高くなりますので、子宮を摘出した人を対象に行なわれます。
エストロゲンには、飲み薬と貼り薬があります。飲み薬が消化器を経由して血液に入るのに比べ、貼り薬の場合は皮膚から直接血液に入るため、貼り薬の方が投与量は少なくて済むというメリットがあります。
但し、胃腸が弱い人は貼り薬、皮膚がかぶれやすい人は飲み薬、というように自分に合わせて選ぶようにしましょう。また、現在プロゲステロンは飲み薬だけで、貼り薬はありません。
HRTを受けている間、注意したいことは、定期的に診断を受け、症状の経過・出血など副作用の有無・血圧の変化などをきちんと確認することです。また、半年に1回は肝機能・コレステロール値・乳がん検診を、年に1回はその他のがん検診や、一般的な健康診断を受けるようにしましょう。
HRTの定期診断を受けることで、更年期症状以外の隠れた病気の早期発見につながるケースが報告されています。
いつまでHRTの治療を続けたらよいのかという問題については、諸説があり、長期服用のリスクを危惧する声もあります。更年期の不快な症状を軽減することが目的の場合は、目安として3ヶ月位で、ある程度の効果がみられますので、改善がみられた時点で、医師と相談してみて下さい。但し、骨粗しょう症の予防が目的の場合は、途中で中断すると効果がなくなりますので、数年間は続けた方が良いでしょう。
HRTによって、乳がんなどの病気にかかるリスクが、わずかながらも上がることは事実ですが、過度に心配することで、HRTのメリットを享受しないのは、あまり得策ではないと思われます。より安全にHRTを受けるために、1年に1回は必ず乳がん検診を受けるようにしましょう。
HRTは健康保険が適用できますので、治療費用はそれほど高くないと言えますが、事前の検査の数や種類によって変わってきます。治療中も定期的に副作用等の検査が必要ですので、一般的な場合は、初診の際に4〜5千円程度、その後は月2〜3千円程度が必要となります。
自由診療や更年期ドックを利用する場合は、この限りではありませんが、自由診療は、完全予約制で充分な相談時間をとれる場合が多いので、よく考えて、自分に合った病院を選ぶようにしましょう。
東洋医学では、更年期症状は「気」・「血」・「水」のバランスが崩れるために、起こると考えられています。「気」とは、元気、やる気、気力などに共通する、生命のエネルギーのことです。
また、「血(けつ)」とは血液だけでなく、体内の栄養物質すべてを指しています。「気」が低下した状態は「腎虚(じんきょ)」と呼ばれますが、「腎虚」とは成長能力や生殖能力などの生命力そのものの不足で、現代医学で言う腎機能の低下とは異なります。
女性更年期の場合は、急激に「気」が低下するため、その反動で身体に異常なエネルギー反応が起こり、いわゆる“頭寒足熱”の逆の“頭熱足寒”の症状、つまり、冷えのぼせ・ほてり・動悸・イライラなどといった「気逆(きぎゃく)」と呼ばれる症状が表われると考えられています。
また、血液の循環が悪くなる「淤血(おけつ)」や、貧血などの「血虚(けっきょ)」を併発する場合が多く、症状に拍車をかけるとされています。
「気逆」の症状に対し、処方される代表的な漢方薬
「瘀血」や「血虚」の症状に対し、処方される代表的な漢方薬
その他の更年期症状に対し、処方される代表的な漢方薬
ほとんどの漢方薬は、空腹時に服用するのが最も効果的です。但し、中には胃を刺激するもの(五積散、十全大補湯、八味地黄丸など)もありますので、受け取る際に確認するようにしましょう。また、エキス剤の場合は、お湯に溶いて飲むようにした方が良いでしょう。
副作用については、それほど心配いりませんが、皆無というわけではありません。特に、他の薬を服用している場合は、必ず医師のアドバイスを受けるようにして下さい。